傭兵、足軽、雑兵…名を残さなかった男たちの物語
これは探求し、「知る」ための歴史ではない。楽しみ、あるいは共感して身につまされるための歴史である。名君や名将のような偉大な個性について書いた本ではない。無名の矮小な、多くの個性を描いた物語なのだ。ランツクネヒトに代表される近世西欧の傭兵のイメージといえば、傍若無人な略奪者、山賊同然のケダモノといったところだが、歴史ファンたるものそのような認識だけでは宝をゴミ溜めに捨てるようなもの。この希代のならず者集団の魅力を理解してこそ歴史を楽しんでいるといえるのではないだろうか。 彼らには彼らの論理があり、生き方があり美学がある。彼らは堕落したのではなく彼らなりに時代や制度と戦った。否、彼らこそがその荒れ狂う旺盛なエネルギーで新時代の扉を開けたのだと著者は言う。考えてみれば大航海時代とて没落貴族とならず者の群れによって行われた大略奪ではなかったか。 テルシオだの、カラコールだのそうした軍事学的なことは本書ではほとんど触れていない。それらの部品に過ぎなかった傭兵たち個々人の生き方や意識に迫っていく。理屈だけではつまらない、歴史を読むことでその時代に飛び込みたい、と思われる方には是非ともお勧めしたい一冊である。
新評論
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