物質をめぐる冒険―万有引力からホーキングまで (NHKブックス)



物質をめぐる冒険―万有引力からホーキングまで (NHKブックス)
物質をめぐる冒険―万有引力からホーキングまで (NHKブックス)

商品カテゴリ:物理学,化学,数学,地学,科学,学習,知識
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概念の扱いが粗雑

著者は、物質という概念は物理学の発展の中でどう変容してきたのか、という問題を一貫して追っている。この問題はとても重要だ。この著者の本が出るたび期待するところは大きい。だが、この本にはがっかりしてしまった。

この本が扱うのは、古典物理が扱う物質概念から、量子物理を中心とする現代物理が扱う物質概念への発展である。この発展を「モノからコトへ」という軸で描こうとしている。だが、成功しているようには思えない。「モノ/コト」という概念対は、むしろ古典物理の物質/場の対立に当てはまっているのではないか。量子物理の物質概念については、もっと異なる概念が必要なように思われた。現代物理の中に見られる古典的には奇妙な現象の解説は、普通の科学読みものとして楽しい。しかし、どうもモノ/コトという概念対には違和感を感じてならない。

このモノ/コトという概念対が、実在論/実証論(実証主義)、具体論/抽象論という概念対と簡単に同一視されてしまうところ(p.160)は実にがっかりである。著者はもともと哲学の訓練を受けた人である。物理学の哲学もきちんと読んでいるはずだ。それなのに、概念のこの粗雑な扱いには納得がいかない。モノ/コトという概念対について、著者は何度か大森荘蔵を示唆している。しかし、むしろ廣松渉が意識されているようだ。物理学での物質概念の発展は、廣松の物象化論に関連付けられているのである。しかし、その関連付けによって物質概念の発展が「哀しい人間の性」として人生論になってしまう(p.48f.)。驚いた。こういうこと書くと、いくら一般向け読み物とはいえ科学書としての信頼性が失われかねないのではないだろうか。現場の物理学者はどう思うだろうか。単なる一般書だから、と諦めるだろうか。

とはいえ、さすがに科学的成果についてはしっかりした記述である。その部分は科学読みものとしてしっかりしている。しかしそれ以外の部分、特に科学的成果についての思想的説明には落胆させられてしまった。
フィクション化する世界

本書は、クラシック、モダン、ポストモダンの3部立て。

クラシックは、私達がよく知る古典力学や電磁気学など
モダンは、相対性理論と量子論
ポストモダンは、さらに進んで虚時間や超ひも理論、スピンネットなど

簡単な物理学史にもなっていて読んでいて楽しい。


で、最先端では、確かなものを扱っていたはずの物理学が、どんどんフィクション化、SF化しているといった内容。
最後の方はほとんど検証不能な仮説の世界ではあるけど、美しい。
中学生から現代思想屋さんまで。

物理なんて、高校二年生の時点で終わっちゃって、その後は私立文系まっしぐらで算数も理科も勉強しないで大学卒業という人種が、この日本には結構存在する。
僕もそんな人間の1人だった。文学や哲学に算数や理科は必要ないんだって、自分に言い聞かせていた。

でも、どこかで数学の重要性や物理の面白そうなところに未練があって、もう一度まなべたらなぁとおもっていた。

この本はそんな、もう一度学びたいって言う気持ちをかなえてくれるだけでなく、その気持ちを、基礎のレベルの理解とともに、現代の物理学の先端を垣間見せてくれることで、高めてくれる。

最近よく見る、「中学生でもわかる物理」とか「もう一度復習する物理」にありがちな、読者を小馬鹿にして内容も曖昧な記述ではなく、
本書では通史的な記述でも、丁寧にかつ参考文献や時代背景などをしっかり押さえて、読ませてくれる。さらに、本書は本のなかだけ完結せず、自分でお勉強するための情報や参考文献、先端の話題を提供してくれることで、次へつなげてくれる。このような科学の読み物は実は結構少ない。

もちろん、本書でもページの容量とわかりやすさを考えたせいか、不確実性の記述のところでは、少し疑問の残る点もあったが、物理のクラシック時代からモダン時代へのつながりや、ポストモダン時代の先端理論の説明は、とてもわかりやすく読みやすい。

また、現代思想なんてのを今でも研究してる人でも、最後の方で出てくる、ポストモダン物理理論のところでの、物理学と現代思想の意外な考え方の繋がりなんかを読むと、とかく現代では意義を見失いがちなご自分の研究分野に自信がもてるかも。

間に入っているショートショートも登場人物も個性的で可愛らしく、物理がふと身近に引き寄せられる不思議な感覚を味わった。

早熟な中学生から、自分を見失った現代思想屋さんまでお勧めの本です。
超お勧めです

 光子がベクトルとの性質を持っているということを、直角に遮った2枚の偏光フィルターの後ろに3枚目の偏光フィルターを45度の角度で入れると、2枚目の後ろで遮られていた、光が復活するということで、後の素粒子のスピンの話につなげていくところはうまい。

 「超ひも」理論に関しては、これまでもわかったような、わからないようなイメージしかなかったけど「なぜ、ひもの形をしているかと言えば、大きさのない点が特異点という悪者をつくりだしていたので、それを回避するために大きさをもたせてみたのである。ようするに『点』の次に簡単な幾何学的構造が『ひも』だったのである。そして、その試みは大当たりした」(p.160)という説明は目ウロコものだった。そして、20年間の研究うちに「宇宙は11次元という拡がりをもっている」「われわれはそのうちの四次元に閉じこめられている(空間三次元+時間一次元)」「超ひもたちはDブレーンから生えている」「超ひもとDブレーンが固くからまった状態はブラックホールである」「Dブレーン上を動き回る超ひも同士がぶつかると、ちぎれて泡が飛ぶようにDブレーンを離れるが、それはホーキング博士が予言したブラックホール放射である」という予言が数学的に明らかにされているという(p.162)。ただし、誰も実験で観測されていないが…。

 この後のスピンネットワークについてはわくわからなかったが、とりあえず、そうしたものが最先端にある、というのがわかっただけでもありがたい。



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