はっきり意見を述べる勇気
高名な理論物理学者である't Hooft氏の著書です。素粒子物理についての説明は一般人にとっては、分かり難いと思います。しかし、次の3点から本書は大変面白いと感じました。1)“ワインバーグ・サラム理論のくりこみ可能性の証明”や“漸近的自由性の発見”などの有名な業績に至るまでの道のりを詳しく説明しており、道のりの険しさや、周りの研究者との議論の大切さが分かること。2)超ひも理論などの現代物理の多くの問題に対して、氏の考えをはっきりと述べており、それらには異端と思える考えもあり大変興味深いこと。3)氏の理論構築に対する哲学や研究姿勢が明確に述べられていること。本書に何を期待するかによって評価は変わりますが、究極理論などの現代物理の進展に興味がある方には良書であると思います。
標準模型と素粒子の話
この本の主題は、素粒子とその相互作用が、いかに解明されてきたかを、歴史的観点から述べることです。そして、超弦理論といった今後の素粒子論の発展についても述べています。著者は、その間第一線で研究を続け1999年にノーベル賞を受賞しています。著者と他の科学者達との交流が、ところどころに語られ素粒子論に取り組む彼らの情熱が伝わってくるようです。 数学は出てきません。但し、「ボゾン」「フェルミオン」「パウリの排他律」といった専門用語が多々出てきます。よって、対象となる読者層は、量子力学と電磁力学(サクライとジャクソンの水準)を終わった学部生か大学院生で、素粒子論に興味のある人達が適当でしょう。 本の評価は星3つとしました。理由は以下のとおりです。 第一に題名です。「未知なる宇宙物質」とありますが、ダークマター等を探す話ではありません。誤解を生みやすい題名です。 第二に翻訳です。「わたしのたちの」(199ページ)といった表現が出てきます。一度見直す手間をおしまなければ防げた間違いではないでしょうか。そして、効率的に漢字を使って助詞を明確にする、或いは、文の主節と従属節を句点によってまとめるといった英文和訳の技術で、この本は、もっと読みやすくなったと思います。(但し、理論を形成する上での数学的問題点を、言葉で的確に伝えようとする翻訳上の努力は評価できます。本では直接語られていない日本人研究者達の功績を注釈として挿入することにも好感が持てます。)
森北出版
量子力学―ランダウ=リフシッツ物理学小教程 (ちくま学芸文庫) 力学・場の理論―ランダウ=リフシッツ物理学小教程 (ちくま学芸文庫) The Life of the Cosmos 神がつくった究極の素粒子〈上〉 神がつくった究極の素粒子〈下〉
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