東京裁判のいちおし歴史的資料のひとつ
東京裁判関連の本は出来るだけ読むようにしています。無理のある起訴状をことごとく否定する戦犯、負けたとたんに手のひらを返して戦争指導者を批判する庶民、冷戦初夜のぴりぴりとした緊張感で駆け引きをする判事。そういった状況が想像できてとても面白いからです。
このレビューを書かれた方の中に、「日本は領土割譲と賠償金支払いを免れたのだから、この裁判も良かったのではないか」との意見がありました。この本を読み、他の関連本を読み、日本の戦後保証の流れと当時の冷戦になりつつある世界状況を鑑みれば、その意見は間違いであると思います。
100歩譲っても、日本は戦前からの領土であった朝鮮半島と台湾を失いました。これは領土割譲でしょう。また中国に対してはODAとの名目で3兆円にものぼる有償無償のお金を払い続けています。これは形を変えた賠償金でしょう。
アメリカに対しては、冷戦構造の中、日本は西側陣営に組み込まれる形で、朝鮮戦争、ベトナム戦争の兵站基地になりました。結果として繁栄できたから良かったものの、当時ソ連から核攻撃される確率のもっとも高い国は、日本だったでしょう。
そんなことを思いつつ、戦勝国の思惑が入れ混じった東京裁判の本を読んでいると、色々なことを想像できます。
『抜粋』でなく全証拠を集めてほしかった。
無理だと承知で、敢えて減点させていただきました。かつて33年前に筆者の講義を聞いた学生としては、「東京裁判」史観に対する批判を行なうには、東京裁判の「法律的な」問題と、訴訟指揮の中で闇に葬り去られた証拠の両方を提示しなくてはならないと思っております。
小堀先生には、「全証拠」を集めてほしかった。紙幅の関係で割愛したのかもしれないが、
全部を突きつけないと、でないと、「東京裁判」史観擁護派に、「あの証拠はないのか」という言い訳を与えることになってしまうからだ。
労作ご苦労様。しかし、もう一息頑張ってほしかった。
理性的な戦後処理???
東京裁判は”理性的な戦後処理”でしょうか?まず、これは裁判であり条約ではないので領土の割譲や賠償金について言及するものではありません。 領土の割譲についてはサンフランシスコ講和条約、賠償金については日本政府がどれだけ他国に支払っているのか今日でも明白でしょう。 この裁判は昭和天皇の誕生日の4月29日に開かれました。この裁判のために必要な費用27億円は日本政府が負担したそうです。 敗戦後で物理的・精神的に荒廃した日本政府がこれだけのお金を費やして行われた裁判の内容はどうであったか。近代法治国家では 禁止されているはずの”事後法”でした。加えて偽証罪は無効。これだけでも”リンチ裁判”と呼ばれるに値するでしょう。 もしこんな裁判で貴方が被告に立たされたらどう感じますか?このような何一つ正しい法的処理を経ることなく戦争犯罪人というのは 決められたのです。それぞれが絞首刑や終身刑に課せられたのですが、その絞首刑の執行日は皇太子殿下(現天皇陛下)の誕生日である 12月23日に行うという徹底した陰湿ぶりです。 これだけの事実を知りながら、まだこれを”理性的な戦後処理”と呼べるでしょうか?
講談社
秘録 東京裁判 (中公文庫BIBLIO20世紀) 共同研究 パル判決書 (下) (講談社学術文庫 (624)) 共同研究 パル判決書 (上) (講談社学術文庫 (623)) 私の見た東京裁判〈下〉 (講談社学術文庫) 私の見た東京裁判〈上〉 (講談社学術文庫)
|